CSRは贖宥状とはならない

ビジネスリーダー達が、企業の社会的責任を果たすことで、倫理的に問題があるのではないかと考えられるようなビジネスの埋め合わせをしようとするのを目にすると、不安にさせられます。

信頼できるビジネスであれば、その本業のビジネスを通して社会に貢献するもので、単に本業の傍に良いことをするだけ、などということはありません。本当に成功しているビジネスリーダーであれば、このことを明確に理解しており、いわゆるCSR(企業の社会的責任)という言葉が流行るよりずっと前から、社会的責任を果たすようにビジネスを導いていました。

米国の大手飲料ブランドのCEOは、比較的最近行ったスピーチで、自分が指揮をとって行っている素晴らしいCSR活動を説明していました。そのスピーチの大半はそのCSRに費やされ、本業についての話は殆どありませんでした。彼の会社はパキスタンとインド間の平和の促進や、自社の飲料製品のアフリカでの流通ネットワークを利用してのワクチンや薬品のなかなか行けないような地域への配達といった国際支援などを行っているとのことでした。全て称賛に値することです。スピーチには、やり手のPRのプロが作成したと思われる、感動的で、この会社に対して素晴らしい印象を抱かされてしまうようなビデオも使われていました。

しかしこの会社の本業の方はどうなってしまったのでしょうか。

スピーチ後の質疑応答の時間の最初の質問は、この会社の作るコーンシロップがたっぷり使われた炭酸飲料が米国での子供、大人の両方の肥満の大きな原因となっていることについてのCEOの意見を求めるものでした。このような質問は度々される筈ですから、このCEOも上手な答えを用意してあるだろう、と思いながら、私は様子を見ていました。

「ですから弊社はダイエットバージョンなど、多くのオプションを揃えているのです。私のティーンエイジャーの娘もダイエットドリンクを飲んでいます。」というのが彼の答えでした。彼は続けてダイエット飲料であろうがそうでない飲料であろうが、適度な量だけ飲むことをアドバイスします、と言いました。娘にもそうしているとのこと。続けて娘がどの位のダイエット飲料を飲んでいるかと問われると、彼は真面目な顔で、「1日に6缶ですね。」と答えました。1日につき、アメリカの2リットル瓶に相応する量です。じっくりこのことを考えてみてください。

特に子供にとっての「適度な量」はそれよりずっと少ない筈、と明らかに思っていた観衆が、それを聞いて驚いて息を飲むのが聞こえました。この企業が行っていたCSRの内容さえ、このショックを和らげる役には立ちませんでした。

Corporate social responsibility is not an extracurricular activity, nor should it be treated like a medieval-era indulgence available for purchase to offset premeditated sin. Click To Tweet

私の知っている本当に素晴らしいリーダーの方々は、皆さんCSRをかさに倫理的な問題があると思われるようなビジネスを行うことよりも、そのようなビジネスは排除することを選びます。

我々の多くは、何が倫理的に間違っているかはわかります。ところが倫理的に疑問のあるようなものを目の前にすると、それを放棄したり、言い訳をしたり、正当化しようとしたりすることがあります。自分のビジネスがやっていることで、少しでも倫理的な問題があるかもしれない、と感じたら、自分にこの質問を投げかけてください。このビジネスのおかげで、世界は実際に、そして継続的に改善されているでしょうか。ビジネスとは別のCSRによってではなく。

この質問をすることが、本物の社会的責任を果たすことへの第一歩となるのです。

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