在日フランス商工会議所主催Conversation withイベントでの対談より
7月22日、在日フランス商工会議所が主催する特別イベントにて、ヴァン クリーフ&アーペル ジャパン社長の山本晶子氏にインタビューする機会をいただきました。
ヴァン クリーフ&アーペルは、単なるラグジュアリーブランドではありません。伝統、芸術性、そして感情を紡ぐストーリーテリングに根ざした、真の意味での「メゾン(maison)」です。山本氏との対談を通じて、ラグジュアリービジネスを真に卓越したものにする要素—社内のリーダーシップから顧客とのつながりに至るまで—について、貴重な気づきを得ることができました。
以下は、特に印象に残った学びです。
1. すべての声に耳を傾ける空間をつくる
社内会議では中立的なモデレーターを設け、心理的に安心できる環境を作ること。一部の関係者だけが発言を独占することがなければ、誰もが安心して意見を出せるようになり、本質的な対話が実現します。
2. ビジネス以外の本を読む
ビジネス書よりも、文学、歴史、社会学、心理学、伝記の方が、ビジネスやリーダーシップにとって深い示唆を与えてくれます。そして、人としての魅力を高める手助けともなります。
3. 自分を偽らないリーダーでいる
オーセンティック・リーダーシップ(本物のリーダーシップ)とは、見せ方ではなく、誠実さです。自分の見せ方と内面が一致していれば、人々はあなたを信頼します。ただし、そこには「弱さ」を見せる覚悟も必要です。真のリーダーシップとは、自分を偽らないこと。それこそが信頼につながります。
4. メゾンは単なるブランドではない
すべてのメゾンはブランドですが、すべてのブランドがメゾンとは限りません。メゾンとは、芸術的なビジョンと文化的遺産、そして時を超えるアイデンティティを持つ存在です。単に商品を売るのではなく、「意味」をつくることが本質です。
5. 商品ではなく、感情を売る
ラグジュアリーの世界では、販売は目的ではなく、「感情に響く体験」を提供した結果として生まれるものです。顧客は感情で購入を決め、その後に理屈で納得します。まずは感情に訴えること。そうすれば結果は自然とついてきます。
6. コールセンターであっても関係性は大切に
コールセンターのスタッフであっても、対面で顧客と会ったことがあれば、個人的な関係を築くことができます。だからこそ、ヴァン クリーフ&アーペルでは、コールセンターも現地スタッフが担うことが大切なのです。ラグジュアリーサービスにおける卓越性は、効率や生産性ではなく、「人との関係性」で決まります。
7. 体験は自社でコントロールする
ブランド体験をコントロールするには、リテール体験を自らコントロールする必要があります。卸売によって流通を拡大することは可能ですが、その過程でブランドの一貫性が損なわれる可能性があります。ラグジュアリーの世界では、この「感情の一貫性の欠如」が大きな損失につながります。
8. テクノロジーは人の温もりの代わりにはならない
売買取引型の販売は日用品には有効かもしれませんが、ラグジュアリーには向きません。AIが対話を模倣できたとしても、人間同士の関係が持つ感情の深みまでは再現できません。人と人とのつながりは、重要というより「不可欠」なのです。

スピード、スケール、自動化が重視される時代において、メゾンの哲学は強力な対抗軸となります。それは「意味、人間関係、クラフトマンシップ」に焦点を当てること。そうすることで、信頼が築かれ、価値が生まれ、情熱が育まれるのです。ひとつひとつのパーソナルな関係から。