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営業チームの現状を容認しないこと

ビジネスを急成長させるには、営業チームの営業のやり方の改善が必要になることがよくあります。私が出会ったリーダーの中には、営業チーム問題があることを知っている人もいますが、多くの場合、具体的にどのやり方を改善しなければいけないのかを完全に把握できていません。以下に記した5項目は、私が目の当たりにした営業スタッフのやり方と、それぞれに対する私のアドバイスです。

1. 無知であること。営業担当者というのは、バイヤーに会う前にバイヤーについての知識を頭に詰め込み、マーケテイングに使うメッセージを説明することで、自分がいかにバイヤーのことを理解しているかをひけらかそうとする傾向があるように思います。質問して学ぼうとはしないのです。バイヤーのビジネスや動機、目標について勉強して間違った思い込みをしてしまうのに比べれば、自分が何も知らないという前提で色々質問をする方が良いと思います。先日、日本人の営業チームとのロールプレイを行った時のこと、ある営業スタッフはバイヤーにこう尋ねました。「この製品は毎週ではなく、隔週使用するだけで大丈夫です。これがどうして素晴らしいか、説明させて下さい。」でもこのような質問のやり方もできた筈です。「私どもの顧客の方々の多くは、使用頻度が少ない、ということを重要視なさいます。御社でもそうお考えでしょうか。それとも他に重要視なさっている点はありますか。」また別のクライアントの会社では、営業スタッフは長いセールスピッチを覚えさせられ、いつでもそれが言えるようにしておかなければならないのだと聞きました。また短い時間で言うために、ほとんど息継ぎもしないようでした。あなたの会社でも、営業スタッフが正しいと思って行っているけれども、実はそのようなことはない、などといったことはありませんか。また彼らは、的確な質問をし、相手の言うことを聞き、会話をすることで、バイヤーについて学んでいますか。それともとにかくセールスピッチを言うことで、自分ばかりが話していたりしてはいませんか。

2. 自分の専門知識については、しっかり主張すること。営業スタッフの中にはセールスミーティングを面接試験のように考えている人が多すぎると思います。それはあたかも、自分が幾つの質問に答えられるかで点数を稼ぐことができると考え、自分が言ったことが正しかったことを祈っているかのようです。しかし、本当にできる営業スタッフは自分の専門分野のエキスパートであり、そこには自信を持っています。営業ミーティングで行われるのはセールスピッチではなく、会話であるべきです。反論があったり、例を挙げることがあったり、相手からの質問に対して逆に質問を返したり、ということもあります。あるロールプレイにおいては、バイヤーが営業スタッフに対し、「顧客サービスの向上のためにERPシステムを導入したいと思います。導入にかかる時間とコストはどのくらいですか。」と尋ねました。営業スタッフはこの質問に対して様々なシステムの導入期間やコストをはっきり答えることができなかったのですが、このように質問すれば、ずっと良い対応と言えたと思います。「他のツールではなく、ERPが顧客サービスの改良に最適だとお考えの、その理由をお聞かせいただけますか。」あなたの会社の営業スタッフは、見込み客や顧客とのミーティングで、エキスパートらしくしていますか。それとも面接試験を受ける生徒のように振舞ってはいませんか。

3. 失礼な質問などない。それがたとえ日本語でも。日本であっても、卑屈になる必要はありませんし、お客様は神様などということもありません。しかし顧客に対してそのような態度をとる営業スタッフが多すぎます。ロールプレイをしながら気づいたのですが、彼らは、単刀直入な会話をすれば失礼と思われるかもしれないという恐れから、自信を持って話すことができず、質問も用心深いものしかしません。しかしそのような態度こそが、相手の痺れを切らせてしまうのです。最近行ったロールプレイでは、営業スタッフがバイヤーに対し、1ヶ月あたりの顧客数について何度も何度も質問しているのを見ました。そしてそれらの質問の多くは、同じ質問の繰り返しでした。横から見ていた私にとっても苦痛に感じられる光景で、これが実際の見込み顧客であれば、もっとイライラする質問であっただろうと想像します。あまりにひどかったので、私は口を挟み、「何を聞こうとしているんですか。」と尋ねました。彼の答えは、「この人は、1ヶ月あたりの顧客数に不満を感じているのではないかと思います。また同時に現在以上の仕事量をこなす余裕もないと考えていらっしゃるのではとも思いました。そして私たちはその問題の解決の手助けができるだろうと考えたのです。」私が相手にそれを直接聞いたらどうか、と言うと、彼は日本ではそのような直接の質問をすることは無礼に当たる、と言って譲りません。そこで私はバイヤーに対し、日本語で、その直接的な質問をしてみました。バイヤーは即座に答えてくれ、しかもその答えからは、新たなビジネス機会が見えてきました。そして部屋にいた人々に(全て日本人だったのですが)、私の質問が礼儀正しく行われたと思うかどうかと質問すると、全員が賛成してくれました。日本語というのは非常にパワフルかつ柔軟性も備えた言語ですから、うまくやればどのような質問でも礼儀正しく行うことができます。あなたの会社の営業スタッフの皆さんは、そのやり方をご存知ですか。

4. 購買提案は価値提案に勝る。価値提案の前提は、全ての顧客が購入決定時に同じ物を同じやり方で評価するという物です。つまりそれは一般的な仮定に過ぎず、正しいこともあれば、正しくないこともあります。一方で購買提案は取引を決定するもので、価値提案とは異なります。数年前のことですが、友人から、ある大きな企業がパートナーとなるモバイル通信プロバイダーを探しているという話を聞きました。このプロバイダーの営業担当者は通信エリアの大きさや容量、ネットワークのスピード、そしてサポートや顧客サービスについて説明しました。それらは全てこの会社の価値提案です。彼は契約を取ることができましたが、その理由は価値提案とは何の関係もないものでした。この大手契約の購買提案とは、モバイル機器にリアルタイムでクリケットの点数を配信することだったのです。それ以外のことは、全然大切ではありませんでした。このようなことを誰が想像できたでしょうか。よくあることですが、営業スタッフはマーケティング部が丁寧に作成したのであろう価値提案に頼りすぎるきらいがあります。最近行ったロールプレイでは、営業スタッフが自分が販売する製品の効能を証明するために、科学的データをバイヤーに見せました。そのようなデータがあれば、契約をしてもらえるだろうと思ったのです。結局データは価値提案の裏付けとなってくれるのですから。しかし、相手がどのようにして購買の決定を下すのか、どのようなデータが相手にとって効果があるか、またそのデータがどのような基準を使って評価されるのか、といったことがわからないままデータだけ見せてそれで商品を売ることができるなどと考えるのは浅はかです。あなたの会社の営業スタッフは、見込み顧客の一人一人に合わせた購買提案を行っていますか。それともお決まりの価値提案をやみくもに行って、どこかでそれがうまくいくことを祈っているだけですか。

5. 価値は地位に勝る。日本は階級制度の社会で、地位が最も大切と考えられているようですが、これはあまりに一般化され過ぎたものだと思います。私もよく日本の営業の人々が、購買決定力を持つエコノミックバイヤーのような高い地位の人に直接会えるわけがない、と嘆いているのを聞いたことがあります。地位の平等性がないことは、「NO」ということを仕事としている秘書や仲介人を通さなければならなかったり、セールスが滞ったりしている言い訳とされるようにもなりました。そうなると、その営業スタッフの会社自体が出ていかないと、契約が結べない、ということになってしまいます。しかしミーティングをするためにはそのような地位の平等性が必要であるなどと考えているのは、購買決定力を持たない不安定な仲介の立場にいる人々と凡庸な営業スタッフだけです。本物の価値に地位など関係ありません。できる営業スタッフは、真のバイヤーにとって肩書きや地位は少しも意味をなさないことを知っています。大切なのは拒否できないような価値をできるかどうかです。大きな利益を出すために手助けがしてもらえるということを納得させてくれるような営業スタッフであれば、その肩書きが何であろうと、話を聞かないバイヤーなどいません。それでも、エコノミックバイヤーでもない相手に時間を割く営業スタッフはまだまだ多くいます。彼らは「地ならし」を行っていると考え、いずれ相手の上司に話が行き、最終的には地位の高いエコノミックバイヤーを巻き込むことを期待しているのです。同時に、営業部長やマネージャーも営業スタッフに同伴して顧客とのミーティングに駆け回っていることが多いようですが、営業スタッフがうまくやれば、彼らについてきてもらわなくても、ちゃんと自分だけでミーティングを行うことができるはずです。もし営業部長についてきてもらわないと契約が取れないと考えているような営業スタッフは、解雇してしまうべきです。そのような人材が必要だとは思われません。

あなたの会社の営業スタッフが顧客の前でどのような態度をとっているか、ご存知ですか。自分たちは良いと思っていても、実は自分のためにもビジネスのためにもならないような行動をとっていませんか。確信が持てなければ、自分で確認し、現状を変えてください。大抵の場合、誰でも新しいことを学ぶ意欲を持ち、向上したいと考えているものです。 自分が望まない現状を受け容れなければならない理由など存在しない。 Share on X

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