Leader holding up employee who stands out from mediocrity and tradition.

凡庸さを習慣としないこと

退屈なマネージャーのことを典型的日本人と揶揄する人を見たことがありませんか。その呼び方は半分しか合っていません。現状を正確に表すには、典型的、というところを凡庸という言葉に置き換えれば良いのです。世界のどこでも言えることですが、日本でも、凡庸さが典型的であるなどということはありません。

未だ聞くたびに驚いてしまうのですが、ビジネスリーダーが、役割に見合った業績を全然出せていないスタッフのことを指して、典型的な日本人マネージャーであると描写することがあります。それはあたかも日本の伝統的規範に従っている日本人マネージャー達が揃いも揃って劣っているかのように。しかし私は自分の経験からも、他の国のどのような基準を使っても、優秀なマネージャーは日本に数多くいる、と断言できます。 あなたの会社に優秀なマネージャーが不足してるとしたら、それは日本だから、というわけではありません。それは会社のやり方に問題があるからであって、そこを調べる必要があると言えるでしょう。 Share on X

第2次世界大戦直後の日本では、食物や住居といった生き抜くために必要最低限のものを確保することも困難でした。そんな中安定した仕事に就くためにはその代価を払うことが当たり前で、勤務先として理想的なトップの会社の殆どでは、終身雇用と年功序列制が採用されていました。そのような習慣は、生活のために必要なものを確保することが難しくなくなってからも続いてきました。会社の規定に書かれていなくても、一様に社員の雇用確保を何よりも優先することが当たり前と考えられることがしばしばあります。しかし、この場合は違います。

本当に優秀な社員は、どのような時でも安定よりチャンスを大切にし、自分に最高の機会を与えてくれるだろうと考えられる会社に惹かれるものです。彼らが雇用確保など気にしていない、という訳ではありません。それは確かに大切なことですから。しかし就職先を決める際に、会社が保証してくれる職の確保は、一番の決断理由ではないのです。優秀な人材は自分の能力に自信があり、雇用を確保するために大切なのは、その能力だと思っています。それは現在の職を続けたい場合でも、嫌な仕事を辞めて新しい職を探す場合でも同じです。つまりできる人材というのは、仕事が見つからないかもしれない、などという不安は持っていないのです。

あなたが大切としていることを同じように大切に考えるような人が、あなたの会社に惹かれるものです。もしあなたの会社に雇用保障を何よりも大切にするといったしきたりがあるのなら、やはり同じものを大切に考える人々を惹きつけ、一方でそのようなことを重要視しない人々は離れていってしまうでしょう。私のクライアントのある企業では、人事部が雇用保障が限られている会社だという評判が広まるのを恐れるあまり、ひどく業績の悪い社員でさえ解雇することを拒んでいました。このことはCEOでさえ知らなかったといいます。「そんなことをすれば、優秀な人材がうちの会社に来てくれなくなります。」というのが人事部長の主張でした。しかし同時にこの人事部長は、「うちの会社に願書を送ってくるのは、良くても平凡としか言えないような人材がほとんどです。以前からいた優秀な人材も、苛立ちから辞めてしまいましたし。」とも嘆いていました。

このような考えを持つ人事からの反対にも関わらず、優秀さを何よりも大切と考えていたこの会社のある部長は、ある時自分の部下の中でも凡庸だと思われる部全体の9割に当たる社員を解雇しました。そうすると、この会社の他の部署の優秀な社員達は、この部長の下で働きたいと移動をリクエストし、また素晴らしい外部の人材からの願書も舞い込むようになりました。人事部は優秀な人材が集まらない、とこぼしていたにも関わらずです。この部長が行ったのは、単に自分が大切に考えていることに関して妥協せず、凡庸な海の中に優秀さを核とする自分独自の島を作ったことです。あなたが重要と考えていることをやはり大切と考えるような人材は、あなたに惹きつけられるものです。

ダメージを与えるような慣習は、往々にして明確でなく、それに気づくことが難しいので、厄介です。会社で新たにリーダーとなった人にとっては特に、そういった慣習が存在することさえ見えないこともしばしばです。それがビジネスに与えている影響自体は明らかな場合でも。上記のケースでも、人事がどれだけ会社にダメージとなっていても、社員を雇用し続けるべきだ、などというはっきりとした規則はありませんでした。人事部はそれまで続いていた習慣を続けていただけなのです。同じく年功序列制に関しても明確な決まりはなかったのですが、それでも社員の昇格にあたっては、年功序列が重視されており、それはもっと優秀な若い社員がいても、変わることはありませんでした。この会社のCEOはこのような慣習について、人事部長に尋ねるまで全然その存在すら知らなかったのです。

あなたの会社でも良くない慣習があるかもしれない、と感じているのなら、周りに聞いてみましょう。実際に採用されたり昇進をした社員に関して、その決断がどのようになされたのか、尋ねてみるのです。そろそろ廃止すべきであるような習慣の存在が見えてくるかもしれません。ビジネスにおいて唯一実行すべき習慣とは、何よりも優秀さを大切にすることだということを理解してください。

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