man and woman look at the city

運命予言者は無視せよ

仮定をすることから生ずる不安は、それがどれ程起こり得そうな仮定に基づいたものであっても、その度合いを測ることなどできません。誰にだって、自分の気に入らないことに関して、その将来を勝手に予言することはできるのですから。唯一予言できないのは、未だ誰も成し遂げてないことだけです。 

あるヨーロッパ企業日本支社のCEOは、約5億ドルの収入を扱う部門の営業担当副社長として中国人女性を採用しました。彼女は輝かしい実績を持っており、態度、姿勢、才能のどれをとっても、このポジションに最適の人材でした。この会社ではダイバーシティーを優先事項として掲げており、日本支社もその例外ではありません。副社長の候補者の中には、すぐに採用できる優れた男性もいたのですが、CEOは女性を雇うことに固執しました。

他に女性の候補者もいたのですが、彼の目から見ると、そのうちの誰もこのポジションに合っているとは思えませんでした。もし彼女たちが男性であったとしたら、適格ではないと判断されたと思われるような人材でした。その中から誰かを雇っても特に周りから文句が出るようなことはなかったでしょうが、それでもCEOは、例えそこで誰かを雇ってしまえば自分の責任を一つ果たしたことになるにも関わらず、自分がこのポジションに掲げているエクセレンス基準に妥協するようなことは決してしませんでした。

彼は、東京にある大手で評価の高い人材会社に幾つも連絡し、助けを求めました。しかし話を聞いたこれらの会社の担当者は全て、彼のリクエストを断ったのです。

彼らは口を揃えて、「それは無理です!」と答えました。「このような内容の仕事にぴったりの女性など、存在しません!男性を雇うことをお考えになるか、或いは採用基準を低くすることをお勧めします。」というのが彼らからのプロとしてのアドバイスでした。それにも関わらず、CEOは一歩も譲りませんでした。

私は個人的に、お金を払うから助けて欲しい、というリクエストを拒否する人材会社を目の当たりにしたことがありませんが、そういう人材会社も実在するということなのでしょう。あなたも過去に東京の人材会社に対して不安を抱いたことがあれば、上記の件は、その不安を裏付けするような内容と言えるでしょう。 

結局、予定より2ヶ月以上長くかかってはしまいましたが、CEOは営業副社長を採用することができました。ところが周りからの風当たりは、そこで止まったわけではありません。この副社長は日本語を話しません。その上、この会社の業界は男性で占められ、しばしば「昔からずっと日本的」だとか「保守的」だとかいった言葉で形容されていました。  

多くの人々の目には、もうこの会社も終わり、と映っていました。会社の将来がないことを憂う人々もいました。 

「日本のセールスマンは大体女性のリーダーに従わないし、日本語が話せない中国人女性なんてなおさらだ!」  

「彼女はスタッフとどのようにコミュニケーションをとるつもりか?言葉が通じなければ役に立たない!」

「彼女は顧客とどうやってコミュニケーションをとるのか?」

「保守的な日本の顧客企業の男性リーダーたちが、中国人女性の言うことを真面目に受け止めるだろうか?そんな甘い考えでいるのか?」

「彼女は日本人の人種差別や女性蔑視にどうやって対処するのか?外国人女性に耐えられるわけがない。」 

しかし、こういった心配は、すべて杞憂に終わりました。営業チームは彼女に対して敬意を払い、その指示に従いました。素晴らしいリーダーであるこの副社長は、ビジネスをより良くするための変革を行うことに固執し、それに対する周りからの抵抗も少しは見られたものの、乗り越えられないような障壁はありませんでした。(大体改革においてはこういうことが殆どなのですが。)

この副社長は言葉の問題の解決法も見出しました。それまで特に誰も気にもかけていなかったジュニアの営業マンが、手伝いたいと申し出てきたのです。彼は英語が流暢で、副社長は、社内や顧客との重要なミーティングには彼を同席させることにしました。彼より上の地位のスタッフの中には、彼のような下っ端の社員を大切なミーティングに出席させるのは、適切ではないし、また彼より偉いとされる社員に対しても不公平ではないか、と文句を言う人もいました。

しかし「こういったことに関して、私は100%公平です。他にも同じくらい英語ができる社員がいれば、ちゃんと同様の機会を与えますよ。」と言う彼女の言葉で、そのような文句を言う人もいなくなりました。

顧客企業のリーダー達も、彼女を高評価しました。洞察力があり、融通も利き、彼らに対する対応の早さは類を見ないものでした。顧客のビジネスのために手を差し伸べもしました。それだけのことがやってもらえるのであれば、彼女が中国人で日本語が喋れないことなど、問題にする人がいるでしょうか。価値と成功が重要である、と言うのは世界中どこでも同じなのです。

結局この副社長は、これまでにこのポジションに就いた中でも、もっともできる人の一人であるということは、会社の実績を見ればわかります。CEOがもし副社長の人選過程の早い時期に適当な人材を雇ってしまっていれば、このような素晴らしい結果は到底出せなかったでしょう。  

仮定に基づいて話をする人々に耳を貸してはいけません。 運命を予言するような人々には、常にその証拠と事実を出してもらうこと。そして人は正当に評価すること。まずは人の最善を信じ、反する証拠が出ない限り、それに従って決断を行うこと。 Click To Tweet これはこのCEOが習慣的に行っていることであり、また私のクライアントの中でも特に成功している方々がなさっていることでもあります。

Join the Discussion

jaJapanese