A businessman pressing an Empowerment button on a transparent screen.

意味のあるエンパワーメント

社員に権限を与えると、モチベーションにもなるし、ビジネス結果を上げる要因ともなり得ます。それを正しいやり方で行なった場合のみ、ですが。一見するとエンパワーメントのように思われる形だけのエクササイズほど不信感を生み出すものはないということは、しっかり覚えておいて下さい。私もよく目の当たりにすることがあるのですが、マネージャーの方々が部下にエンパワーメントを感じてもらう為の無理な試みをすることがあります。それは人事マネージャーからの指示によるものであることが多いのですが、実はその人事マネージャーも、間違ったやり方のエンパワーメントが引き起こす問題についてなど全然わかっていなかったりするものです。

エンパワーメントというのはしょっちゅう耳にする言葉ですが、それが一体何なのかという定義を聞くことは滅多にありません。私はエンパワーメントをこのように定義しています。「自分個人の働きを通してビジネス結果に貢献する能力。エンパワーメント自体は決断に関係するものではなく、また単に権限だけを指すものでもない。エンパワーメントには社員がビジネス結果を出す能力が含まれていなければならない。例えば顧客サービス担当の社員が、自分の権限で会社のお金やその他のリソースを使って顧客に関する重要な問題を解決することができる、というのはエンパワーメントと言える。」 

上から目線のジェスチャーだけのエンパワーメント的な行為ほど、社員のやる気を削ぐものはない。 Click To Tweet ある企業の最大の営業部門の部長は何億ドルという売り上げの責任を担っていました。彼は戦略開発ワークショップを開催し、そこでマネージャーの士気を上げることを期待していました。彼らに戦略をデザインさせれば、彼らも責任感を覚え、モチベーションも積極性も上がるだろう、と考えたのです。ところがそれは机上の空論に過ぎませんでした。

実は彼とCEOはその戦略をすでに大部分作成済みだったのです。営業部長はそのことを知ればマネージャーたちの士気が下がる可能性があると考え、ワークショップ中は、そのことを彼らから隠していました。そして実は既に決まっていた戦略に行きつくようにあらかじめ計画された戦略開発エクササイズをやらせたのです。そのような策略にマネージャーたちが誰も気付きはしない訳はありません。

エンパワーメントとは抵抗器のようなもので、スイッチでオンとオフに切り替えられるといったものではありません。戦略ワークショップの前にある戦略決定が既になされていたからといって、その生でマネージャー達がやる気をなくすというわけではありません。殆どの場合、戦略の中にはマネージャーや社員の範疇外のものがあって当たり前なのです。それでもマネージャーのひとりひとりが貢献し、ビジネス結果の達成につなげることができないというものではありません。

どのような場合でもエンパワーメントには制限があるもので、それを否定する人には耳を貸してはなりません。戦略ワークショップでは、その制限のある部分、ない部分を明確にすることで、参加者にパワーを与えるのです。制限がないなどという振りをすることは間違いです。マネージャーや社員全員に自分たちがいつでもビジネス結果を出す力を与えられていると感じさせる必要などありません。必要な時、必要な場面においてビジネス結果の一部に対する権限を与えるだけでも、大体は十分なのです。

戦略開発ではどのような時でも、交渉可能な面と交渉不可能な面の両方があります。CEOが戦略に合わなくなったからという理由で製品ラインをストップするような場合があれば、それは交渉不可能と言えます。しかし、その製品ラインをストップする方法や、いつストップするか、ストップすることで影響を受ける顧客を必要に応じてどうサポートするか、営業チームがこれをどのように実行し、顧客に説明するか、といったことは、話し合いで決められることです。実行方法を決定する際には、リーダーはマネージャーやスタッフの手助けに頼ることになるのです。彼らこそがオペレーションや顧客に一番近い存在なのですから。

ビジネス結果を出す為に必要な場面で助けを求めることは、彼らへのエンパワメントとなります。また、助けを求めることほど効果のあるエンパワーメントはありません。人を助ければ、人はとてもパワーを感じるものなのです。

だからといって、エンパワーメントが社員のモチベーションやビジネス結果をあげる鍵となる、というわけではありません。そのようなことを言えば嘘になります。

他人をエンパワーメントすることはできません。人は自分で自分をエンパワーメントしなければならないからです。あなたにできるのはその邪魔となっている障害物を取り除いてあげることであり、自分に与えられたパワーを使うかどうかは、社員一人ひとりにかかっているのです。

では、何を言おうが与えられたパワーを使うことを使うことを拒む社員はどうすればよいのでしょうか。その場合は自分の持つ権限を使って、彼らを解雇し、代わりにパワーを使える社員を雇えばよいのです。

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