社員に起業家精神を持ってもらうには

私のクライアントのあるCEOの方は、社の役員達に「ビジネスにはもっと起業家のようなアプローチをして欲しい」と要望しています。このようなことは他の会社でも見られるようになりました。

マネージャーやスタッフがもっとビジネスオーナーのような考え方や行動をすれば、多くのビジネスの業績を上げることが可能である。 Share on X

しかしながら、サラリーマンは起業家とは違います。これは例え会社から給料をもらっているCEOにも言えることです。彼らはひいき目に見ても出世第一主義者です。出世第一主義者と起業家がまるで違った考え方をしている、というわけではありません。ただ、いくら社員の主要業績評価指標やボーナスのシステムが整っていても、キャリアにまつわるリスクや報酬が、ビジネスオーナーのそれとは常に同じではないのです。

社員として働いているあなたがもっと起業家のような考え方をしたいと感じているのであれば、まず自分自身が出世第一主義的な考え方を持っていればそれを認識し、そしてそれを乗り越える勇気を持たねばなりません。

起業をしたことがない方々には、「起業家的な考え方をすること」というのがどういうことか、わかりにくいかもしれませんね

そこで出世第一主義的な考え方と起業家的な考え方の違いを、以下にリストアップしてみました。これらは全て、実際に私が見たり聞いたりしたそれぞれの懸念や考え方です。

この表を見ながら、自分にはどれが当てはまるかを考えてください。また、自分の部下にはどれが当てはまるかも考えてみてください。

あなたが起業家であっても社員であっても、ほとんどの人はそのどちらの考え方も幾らかは持ち合わせていることを頭に入れておいてください。そして起業家にも、彼らのビジネスにも、様々なタイプのものがあることも忘れないで下さい。

出世第一主義者

起業家

年金が大切。 財産が大切。
キャリアを伸ばすのに役立つかどうかという視点から、物事を見る。 自分のビジネスを伸ばすのに役立つかどうかという視点から、物事を見る。
どうすれば自分のゴールを達成できるだろうか。 どうすれば顧客に対する価値を付け加えることができるだろうか。
より良い役職に昇進したい。 より良いライフスタイルが欲しい。
自分の仕事を取ろうとしているのは誰だろうか。 次世代のリーダーを開発しなければ。
この経費を見れば自分の上司はどう思うだろうか。また、もっと心配なのは経理部からどう思われるかだ。 この経費を見れば自分の配偶者はどう思うだろうか。
これを実行すれば、自分のキャリアが危うくなる可能性があるだろうか。このようなことをする価値はあるだろうか。 これを実行しなければ、ビジネスにどのようなリスクがあるだろうか。トライしないだけの価値はあるのだろうか。
次に自分が就く仕事は何がいいだろうか。 ビジネスをレベルアップするときには、どのようなものにしたいだろうか。
上司はどう思うだろうか。部下にはどのようなことを言われるだろうか。 顧客にはどう思われるだろうか。市場はどのように受け止めるだろうか。
この新規雇用は人事に認めてもらえるだろうか。 人事に賛成されなくても、最高の人材を雇い、見合った給料を出すのが私の方針だ。
人事規則では誰でも出張はエコノミークラスのみとされている。これは公正だし、経済的でもある。 私は自分を大切にしているし、出張先に着いた時にベストのコンディションでいたいので、いつもファーストクラスを使っている。
コストは予算内に納める必要がある。 投資利益率を最大限にすることが大切だ。
このプロジェクトのコストは高い。 このプロジェクトの価値は高い。
給与をあげてもらうには何ができるだろうか。 できるだけ早く現金を手にするには何ができるだろうか。
私のボーナスはいくらだろうか。 私の純利益はいくらだろうか。
みんなに混じって口を閉ざしている方が安全だ。 成功とは周りから抜きんでることである。例え私の言うことややることが気に食わないという人々がいても。
いくらいいアイディアがあっても、それを上司が気にくわない可能性があれば、それを提案するなどということさえ怖くてできない。 いつでも率直な意見を言ってほしい。私が賛成しないと思うような時は特にそうしてもらいたい。
この予算はビジネスを良くするために使うべきだろうか、それとも後で予算が足りなくなったときのためにとっておくべきだろうか。 この金銭は自分のビジネスに投資するべきだろうか。それとも子供の大学資金用の投資に回すべきだろうか。
私はいつも忙しすぎるが、そのおかげでこの仕事をやり続けられているのだ。 好きな時に人生を謳歌する時間がなければ、どんなに資産があっても意味はない。だから私は言い訳することなく人生を楽しんでいる。
仕事は9時から5時まで、ということにはなってはいるが、実際にはもっと長時間働いている。 その日にやりたかったことを済ませてしまえば、いくら早い時間であっても仕事を終えることにしている。
チームの一員として、そして情報を聞きそびれないためにも、大して意味のない会議に多く参加する必要がある。 私は決定事項がないような会議は開かないし、うちの社員もそれは同じである。
周りを説得するためには、多くのデータとしっかりした分析結果が必要だ。 私は専門家なんだから、周りにも私の意見を率直に伝える。彼らが私の言うことに反対するのは自由だが、彼らも自分で責任を持ってそうするべきである。
私の作ったスライドを見て下さい。 このホワイトボードを使わせてもらってもいいでしょうか。
次回の社員のエンゲージメントサーベイでは数字をあげる必要がある。 エンゲージメントサーベイって、何?
都合のいい時にこれをやろう。 決断した時が常に最高のタイミングだ。
私の戦略に賛成しない人が一人でもいれば、きっと内容に問題があったのだろう。 私の戦略に誰も賛成してくれなければ、多分内容に問題があったのだろう。
私は一所懸命に仕事をし、時間も使っているから、給料をもらえているのだ。 私は顧客のために結果を出しているから、稼いでいるのだ。
あまりきついことを言うと、人事に言いつけられたり辞められたりするので、ほどほどにした方が良い。 私は別に人に好かれたいとは思っていない。
私はルールに従って行動する。 私は自分で自分のルールを作り、自分の運命をコントロールする。
失敗はできるだけ避けるべきである。 失敗とは学習であり、それは受け容れるべきである。
誰もこのようなことはやったことはない。リスクが高すぎる。 誰もこのようなことはやったことはない。市場を作りあげ、そこで自分達が優位になれる可能性があるようだ。
ビジネスで成功するには、マーケティングや財務、そして専門分野で長けていなければならない。 ビジネスにおいて一番重要な能力は顧客開発である。それができなければ、他の人がやっている企業の社員になっているだろう。

いかがでしたか。

起業家的な考え方のうち4分の3以上が当てはまるようであれば、例え今社員として働いていても、かなり起業家精神に溢れていると言えるでしょう。半々くらいであれば、誰かに雇われてビジネスを経営していても、まあまあの現場管理者である可能性が高いと思います。半分以上が出世第一主義者的な考え方、と言う結果の場合は、起業家精神からは程遠いですし、起業家的な行動の力強さなどはさらに足りないと言えるでしょう。仕事で成功していない、という訳ではありませんが、起業家ではないと思います。

もしこれを読んでいるあなたが、自分のスタッフにもっと起業家的精神を持って欲しいと感じている雇われCEOであれば、まず、自分の行動を見直すことをお勧めします。

そうすることで、自分のスタッフを成長させるために必要な信頼を得たり、理解を示したりすることができるようになるのです。

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