日本のある企業のCEOは、営業担当副社長として中国人女性を採用したいと考えていました。これは日本で5億ユーロに値するビジネスを統括し、100人を超える営業員やマネージャーを指揮するポジションで、彼女は最も才能のある候補者でした。
しかし、社内外の「日本についてのエキスパート」と自負する人々には、彼女を雇えば前途多難だろうと言われました。彼女は日本語が話せず、彼女が率いることとなるチームはその殆どが男性で、英語がわかりません。彼らの業界を語るときにしばしば使われるのは、伝統的、保守的、男性主導、女性蔑視などといった言葉で、外国人嫌いなどという声さえ聞かれるほどでした。
「日本のセールスマンは大体女性のリーダーに従わないし、日本語が話せない中国人女性なんてなおさらだ!」
「彼女はスタッフとどのようにコミュニケーションをとるつもりか?言葉が通じなければ役に立たない!」
「彼女は顧客とどうやってコミュニケーションをとるのか?」
「保守的な日本の顧客企業の男性リーダーたちが、中国人女性の言うことを真面目に受け止めるだろうか?そんな甘い考えでいるのか?」
「彼女は日本人の人種差別や女性蔑視にどうやって対処するのか?外国人女性に耐えられるわけがない。」
CEOはこういった警告に屈することなくその中国人女性を採用し、彼女のアドバイザーとして私を雇いました。
私たちはすぐに言葉の問題を解決することができました。英語が堪能な若手セールスマンが通訳兼翻訳者として名乗り出てくれたのです。
彼女のスタッフについては、日本の企業文化に関する既成概念など無視するように助言しました。関係のないことですから。
企業文化は国によってではなく、リーダーによって作られるものです。最も成功しているリーダーの方々は、自分たちのリーダーシップスタイルを企業の文化に合わせたりしません。企業の文化の方を自分のリーダーシップスタイルに合うように変えるのです。
私は彼女にそのやり方を説明しました。そして彼女のスタッフは殆ど抵抗することなくこれに従ったのです。通訳を介して、彼らはちょくちょくフランクに彼女と話すようになり、ユーモアも交えてコミュニケーションをとるうちに、彼女のことが好きになったようです。彼女に絶対的な信頼をおくようにもなりました。
また私は、顧客企業の日本のCEOとミーティングをする時には、常にオープンマインドで臨むよう、彼女にアドバイスしました。
確証がない限り、人々には悪気はないと考える、と言うのが私のスタンスです。「この人は女性蔑視や外国人嫌いといった傾向を持っているに違いない。」などという思い込みは捨てましょう。
「あなたのクライアントCEOのほとんどは日本人起業家です。」と私は説明しました。「彼らがあなたから物を買うのは、あなたが彼らが収入を得る助けをしているからです。彼らはその収入のおかげで家族を支え、ライフスタイルを維持し、子供たちの教育費を出し、休暇を過ごせるんです。あなたは、彼らが子供たちに成功したビジネスを残すことができる、その手助けをしているのです。日本であろうがそれ以外の国であろうが、あなたが提供している価値に妥協を許すような起業家はいません。彼らの言うことに頻繁に耳を傾けるのです。彼らのビジネスの成功を手助けすれば、あなたも大丈夫ですよ。」
彼女は私が言った通り、クライアントCEOを頻繁に訪問し、耳を傾け、アドバイスし、彼らのビジネスの成長を手助けしました。彼女の人気は上昇し、彼女がミーティングをしたいと言うと、彼らは喜んで承諾しました。彼女は、前任者の誰よりも頻繁にクライアントとコミュニケーションを取りました。ちなみにその前任者全員が日本人で、その殆どは男性ででした。
彼女の努力が実を結んだのです。彼女は、同じ役割を担っていたこれまでの副社長の誰よりも、素晴らしい実績を達成しました。
彼女を雇用したCEOが大喜びしたのは言うまでもありません。彼の決断が正しかったとも立証されました。