軍隊の優秀な戦略家は、どのような時でもまず戦いの場所を敵に選ばせるのではなく、自分の選んだ場所で戦おうとします。
しかしこれがビジネスとなると、その環境を自分で選択するのではなく、周りの人々に選ぶことを許してしまうリーダーがしばしば見られるのは何故でしょうか。
戦略とは、ビジネスをどの方向に持っていくかを決定するフレームワークです。まず将来の理想的なビジネスのあり方を決めて、そこから逆算して、現在の戦略を作り上げるのです。
そのビジネスのビジョンとは、企業の現在の能力(あるいは能力の欠乏)や、ビジネスを脅かしているもの、ビジネス環境に存在するチャンスなどによって、影響を受けるべきではありません。日和見主義と戦略は、全くの別物です。脅威となるものに反応するのは、消極的なことです。また、現在の能力の分析などは、プランニングをする際に積極的にすれば良いのです。プランニングとは現在の状況から初めて将来に向かって行うことですから、戦略とは正反対なのです。ですからいわゆる戦略プランニングという言葉は、矛盾した表現です。
私の知っている有能なビジネスリーダーの方々も、現在の状況など考慮することなく将来を作り上げています。そのようなリーダー達は、よく愚か者だとか、正気でないとか、現実的ではない、といったレッテルを貼られることがあります。例えば楽天の創業者で代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏やファーストリテイリングの創業者であり代表取締役会長兼社長の柳井正氏、セブン-イレブン・ジャパンの初代CEOの鈴木敏文氏も、そう呼ばれていました。そして理性的と思われていたいわゆる戦略のエキスパート達は、皆、彼らの戦略がうまくいくわけがないと予想していたのです。しかし、それにも関わらず、彼らが成功したのはご存知の通りです。
もしスティーブ・ジョブス氏が理性的な戦略家であったとしたら、マックではなく、アップル4を開発したでしょう。また鈴木敏文氏が理性的戦略家だったら、セブンイレブンをセブン&アイ・ホールディングスにして日本の小売業を変えるのではなく、当時のイトーヨーカ堂社でより良いスーパーをオープンするという道を選んだでしょう。柳井正氏が理性的な戦略家であれば、ユニクロを展開して日本の衣料品業界を改革するに留まらず世界的な現象まで巻き起こす代わりに、単に衣料品の卸売ビジネスの改良に取り組んでいたと思います。孫正義氏が理性的戦略家だったとしたら、NTTのトップの販売店となり、今日ではモバイル業界の大手となったソフトバンクを作ることなどなかったでしょう。
ビジネス戦略とは、洗練されたフレームワークにのっとって現在の状況を元に理想の将来を決定するものではありません。ビジネス戦略の本質は、現状に関係なく、自分が手に入れたいビジネスの未来を作り出すところにあります。
あなたは自分のビジネスに、思い切った戦略を作りたいと考えていらっしゃいますか。そうであれば、競合の激しい環境を分析することはやめましょう。現在の強みや弱点も忘れて下さい。業界に存在する脅威に不安を感じるのも、止めてください。勿論、SWOT分析やその類の使い古されたフレームワークを使うのもよしましょう。
競合相手に戦いの場を選ぶことを許したり、環境によってビジネスを定義されたりすることに甘んじてはいけません。誰にも、何にも、あなたがビジネスをどのようなところまで持って行きたいかを決めさせるべきではないのです。
あなたのビジネスの方向性をどうしたいかを決めるのはあなただけ。言い訳をする必要も、例外を許す必要もありません。理不尽と思われても良いのです。 Share on X
そしてそこから現在どうすれば良いかを考えるのです。
あなたも自分の戦いの場を選ぶ将軍になれるのですから。
他にもそうやって成功した人々がたくさんいます。