関西に本社がある某企業の東京営業所のマネージャーは、アポイントメントなしに訪問してくる他社のセールスマンを当たり前のように追い返すことが習慣となっていました。そのセールスマンがどのようなオファーを持ってきたのかも、誰に会おうとしているかも聞かずに、とにかく興味がない、と追い払うのです。小さいオフィスなので、マネージャーが訪ねてきたセールスマンを撥ねつける様子は、彼の部下である営業スタッフも含め、社員全員が目にするところとなります。
しかし自分の営業スタッフが見込み客である会社を訪ねるとなると、少なくとも彼らが訪問先の会社に足を踏み入れさせてもらい、話を聞いてもらい、できれば最適な人に話を繋いでもらうことをこのマネージャーは期待しているのです。そこで繋いでもらった人が結局話をすることを断ることもあるでしょうが、少なくともそこまでは行けるべきだと考えています。
しかしちょっと考えてみて下さい。片っ端からセールスマンを追い返すような様子を目にさせられる営業スタッフや他の社員達はどのように感じるでしょうか。自分たちがやっている営業の仕事に、上司は価値を見い出し敬意を払ってくれていると思うでしょうか。このマネージャーの態度は、部下が営業に出る際の自信や態度、自尊心にどのような影響を与えているでしょう。営業以外の社員は、この営業マネージャーの態度をどう感じ、また、彼らの営業スタッフに対してはどのように思うようになるでしょうか。
営業とは崇高な職業です。営業を行う人々は、人々の生活の向上を可能にします。私のクライアントの皆様は、ビジネスオーナーの方々がより裕福になったり、ビジネスマネージャーの業績を上げたり、人々が致命的な病気から回復したり、車に乗る方々やその周りの人々の安全を守ったり、人々の健康を改善したり、人生を楽しんで過ごしたりするお手伝いをするお手伝いをするなど、様々な形で価値を生み出しています。そして大抵の場合、人々とその価値を結びつける役割を果たしているのは、どこかのサーバー上で動いている人工知能などではなく、営業に関わる人々なのです。彼らなしでは、人々がその価値を経験することができないかもしれないのです。
営業とは崇高な職業である。 Share on Xこれ以上に崇高なものなど存在するでしょうか。
私の知っている別の某企業では、事務員はいきなり訪問してきた他社の営業スタッフは通さないように、との指示を受けています。彼らが会社の外から電話してきて訪問の旨を告げた場合でも、社内ロビーに来てから連絡してきた場合でも同様です。しかし会社のオーナーの一人でもあるある役員がたまたまロビーで訪問してきた他社営業スタッフを見かけると、必ず声をかけて話を聞くのだそうです。彼女はその営業スタッフが持ってきた話に価値がある可能性もあると考え、少なくとも話だけでも聞くべきだと考えているからです。実際、こうやって急に訪問してきた営業担当者が持ってきた話のおかげで、会社の業績も上がったといいます。なのにどうして社員には訪ねてきたセールスマンは追い返せなどという指示を出すのか理解できません。
訪ねてきた営業スタッフが自分以外の人にとって価値のあるオファーを持ってきた可能性もあり、その場合はその人に紹介すれば良いだけです。あなたの会社で同じようなことがあれば、やはり適切な人間、場合によってはあなたに紹介してもらいたいと思われませんか。
営業担当者は数多くの人々やビジネスにコンタクトする立場にあり、その中には会社にとっての顧客や見込み顧客も含まれます。そして営業担当者が、自分が訪ねたことのある企業(例え契約が取れなかった企業であっても)に対する感想を求めれらたりすることも珍しくはありません。もし他社のセールスマンがあなたの会社についての感想を求められたとしたら、あなたはどのように答えて欲しいと思いますか。
同時に営業担当者があなたの会社のことを他社に紹介する可能性があることも忘れないでください。これはあなたの会社がその営業担当者にとっての顧客でない場合でも言えることです。あなたやあなたのビジネスについての何らかの知識を持ち、あなたが自分の顧客にとって何らかのプラスになる商品、サービスを提供していると感じれば、彼らは間を取り持ってくれるでしょう。紹介することでその顧客にとっての営業担当者の株は上がりますし、それが最終的に契約に繋がらなかったとしても、良いことであることに変わりはありません。
私自身、メッセージを残していただいたら、それがクライアントであろうが、見込み客であろうが、それ以外の人であろうが、営業時間内であれば90分以内に折り返し連絡させて頂くことに決めています。それは営業担当者の方からの電話であっても同じことです。セールスの電話を避けたり、代わりに誰かにチェックしてもらったり、ということはしません。ここでもう一度言わせて頂きますが、それは私が営業は崇高な職業であると考えているからです。
あなたの会社の営業担当の方々はそのような見方をしていますか。他の社員の皆さんはどうですか。そしてあなたはどう考えていらっしゃいますか。