常に正しいことを行うこと

私のクライアントであるCEOの話ですが、彼女は危機に直面していると嘆いていました。労働組合のメンバーが同社の小売店舗の前で声高に抗議し、同時にSNSでも圧力キャンペーンを展開しているのだそうです。結果、組合側は同情を集めることにある程度成功していました。そのきっかけとなったのは、同社のある幹部が、成績が振るわない60歳のマネージャーを解雇することを決定したことで、そのマネージャーと組合は年齢差別を受けた、と会社を非難した訳です。しかし、実際の解雇の理由は、長期にわたる業績不振によるものでした。

CEOは、会社のイメージや評判が損なわれる可能性、本社の上司が自分に責任を押し付けてくるかもしれないということ。そしてそれらが自身のキャリアにどのような影響を与えるかということも心配していました。CEOは、自身の管理下で行われたこともあるそのマネージャーのこれまでの採用や昇進に間違いがあったことに気づき、さらに調査を続ける中で、他のスタッフに関しても、同様の間違いがあった可能性があると感じていました。そして弁護士や危機管理コンサルタントからも対応策のアドバイスを受けてはいたのですが、彼女は私にも助言を求めました。

「弁護士や危機管理コンサルタントの言うことは鵜呑みにするべきではないですよ。」と私は言いました。「彼らの利益は必ずしもあなたの利益と一致するわけではありませんし、このような状況では往々にして彼らだけが利益を得るものです。上司やキャリアについての心配はとりあえず傍に置いて、引き続き内部のプロセスや慣行を調査してください。将来のためにはこれらを修正する必要がありますが、今、あなたが下すべき決断には関係ありません。」

「自分にただひとつだけ問いかけてください。倫理的に、道徳的に、そしてビジネスの最善の利益にとって正しいことは何か。もし会社が間違った人を採用し、誤って昇進させた責任があると感じるなら、それを考慮に入れて決断してください。」

彼女は少し考えて、会社にはある程度の責任があるという結論に達しましたが、それでも取るべき正しい行動とは何かということをまだ考え続けていました。そのマネージャーからの要求は、今の仕事を続け、あと10年間は働きたいというものでした。

そこでこのCEOに、会社の方針は一旦無視し、自分自身の道徳と倫理に従って考えた場合、その要求が正しく公平だと思うかと問いかけました。

「いいえ。」と彼女は答えました。「低パフォーマンスのマネージャーをそのままにしておくのは、ビジネスにとってフェアではありません。サービスレベルが下がるのですから、顧客にとってもアンフェアです。彼女の下で働くスタッフや、彼女と一緒に働く同僚にとっても不公平です。低パフォーマンスのマネージャーが立ちはだかることで、昇進すべき成績優秀なスタッフがチャンスを得られないのも不公平です。また、より良い機会や上司の下で働くことを求める優秀なスタッフが競合会社に流出するかもしれないという点でも、ビジネスにとって不公平です。ビジネスの結果については私が責任を負わなければならないのですから、私にとってもフェアとは言えません。マネージャーの要求に屈することで顧客、ビジネスオーナー、そして自分の仕事やキャリアにどのような影響があるかを考えざるを得ません。そのようなことになれば、スタッフや同僚は、会社やリーダーとしても私について、どう思うでしょうか。」

そこで私は彼女に、正しいことは何だと思うかと尋ねました。彼女はすでに公正な退職金を提案していたものの、それでは足りないようでした。組合の幹部から退職金を受け取るように促してもらっても、そのマネージャーは退職金ではなく、引き続き雇用されることを望んでいました。

彼女は再び私にどうすべきかを尋ねました。

私は彼女に、彼女はできる限りのこと、そしてフェアで正しいことをしていると伝えました。彼女がここで折れてマネージャーの要求に応じてしまえば、彼女の倫理や道徳に反することとなってしまいます。

では、組合の抗議活動や会社のイメージ、そして本社の上司からの怒りを買う可能性についてはどうすれば良いのでしょうか。

組合は抗議を続けるかもしれないし、ストップするかもしれません。公衆はたとえ公平でなかったとしても、言いたいことを言うものです。上司たちはCEOのとった行動が正しいかどうかに関わらず、自分たちの下したい判断を下すでしょう。CEOがコントロールできるのは、自分の行動とその行動をとった理由の説明だけです。そして人々は同意するかもしれないし、しないかもしれません。

リーダーであれば、できる限りベストの判断をし、どのような結果となっても、それに対応すべきです。

他にあなたが自分で十分に納得できるような代替案があるでしょうか。

 

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Join us for an exclusive conversation with Rodrigo Lima, President of Danone Japan. I will interview him onstage to start a conversation, and then invite the audience to ask their own questions, providing ample time for you to ask yours. There will be no slides, speeches, or presentations—just provocative, unscripted conversation.

Date: Thursday, February 6, 2025
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