以下に挙げたのは、私が知っている中でも最も成功されている方々の戦略のやり方に基づいた、ビジネスリーダーの為の7つのアドバイスです。特に日本では、公開討論会で私がこれらについて述べると、必ず少なくとも何人かから反対意見が返ってきます。怒りを表す人が出ることさえありますが、それもまた予想できることです。
これらのアドバイスが私の意図通りに理解されれば、気持ちよく感じない人が出てくるのは当然なのですから。
1. まず何より最初に、利益を出しているビジネスのどれを排除するか決めること。
農家が新しいものを栽培する際には、まずどの土地を更地にして使用するかを決めなければなりませんが、ビジネスを成長させたい場合でも、最初にそのための余地を作り出すことが必要です。企業のビジョンに近づくことに役に立たないようなビジネスであれば、それがいくら利益を出すものであっても、容赦なく切っていくべきです。
2. まず行動し、後から賛同を得る。
実験的にであっても、まず新しいやり方を取り入れてその効果を体験させるというやり方は、凝った社内コミュニケーションや説明会、社外会議などといった方法に比べ、断然説得力があります。実際の成功を経験させるほど、賛同を得るために効果的なものはありません。本当にできるリーダーは、周りから賛成をしてもらうために、戦略の実行を遅らせたりはしないのです。
3. 意見の一致は理想的だが、必須ではない。
社内ではいろいろアドバイスをくれる人達がいるかもしれませんが、たとえ彼らのアドバイスや意見に逆らうことになっても、結局のところビジネスの方向性を決めるのはあなたです。あなたはリーダーとして、間違いを犯す権利もあるのです。最終的にあなたが決めることに責任を負うべきなのはあなたであり、周りの人達ではありません。
4. 調和を重要視しないこと。必要なのは、建設的な不調和。
これはたとえ日本であっても同じことです。調和をあまり重要視すると、水面下でのビジネスの問題、ビジネス機会の喪失、決定の遅延などといった問題につながっていきます。戦略開発の際の討論は時々白熱するべきで、反対意見も、オープンに出されるようでなければなりません。自分の権利が脅かされると感じる人もいるかもしれませんが、問題について議論することなく結局危機状態に陥ってしまうより、いかに感情的な議論となっても、問題を表面化させて解決策を見出す方がずっと良いはずです。東芝や富士フィルム、タカタ、フォルクスワーゲンといった例を思い出した方もいらっしゃるでしょう。
5. 完璧さよりスピード。
どれだけ多くのデータを使っても、完璧な戦略決定は無理です。戦略決定の多くは概ね正しい、というレベルであり、実践する際にある程度の調整が必要になるかもしれません。殆どのビジネスにおいては、成功するためにはそれで十分なのです。しかし、戦略の完璧さにこだわって戦略作成に時間をかけてしまうと、進行が留まったり、ビジネスの成長が遅れたり、競合企業に出し抜かれることになる、といった可能性も出てきます。戦略において致命的な決定をしてしまうといったことは稀ですが、一方で決定を行わないということは100%致命的なのです。
6. 競合相手の分析をやめる。
自社の戦略を考える際に競合相手の動きを重要視してしまうと、気づかぬうちに競合相手の土俵で戦わされてしまうことになります。画期的な戦略を作成するためには、競合相手のことは忘れましょう。自社の強みに基づいて市場と業界を定義し、自分たちのやり方でライバル社に競争させるのです。
ライバル社に、常にあなたの会社の分析をさせるように仕向けること。 Share on X
7. 未来は予想するのではなく、創造する。
戦略とは、ビジネスの現在の状況に基づいて予想し得る将来を描くものではありません。ビジネスの将来のビジョンを達成する為に、現在に遡って作るものです。そのビジョンがいくら到達不可能に見えたり達成方法が不明だとしても関係ありません。無理をせずとも達成できると誰でもが感じ、そのやり方さえ既に見えるような戦略は、きっと大胆さに欠ける戦略です。戦略とは企業の可能性の成長を後押しするべきもので、ビジネスを伸ばすだけのものではありません。戦略はあなた、そして周りの人たちの世界観を変える程のものであるべきなのです。
あなたにも、大胆な戦略を実行した経験はありますか。コメント欄、或いはXでシェアしてください。
(この記事の別バージョン「成功する企業が策定する戦略に5つのポイント」は、2017年9月28日付日経産業新聞に掲載されました。)