Automate HR, Proliferate Mediocrity

人事の自動化は凡庸の始まり

機械学習アルゴリズムというのは、その学びの元となっている人間より賢くはありませんし、殆どの場合、頭の良さのレベルが近い、というところまでさえもいっていません。

私は技術革新反対者ではありません。ロジスティックやサプライチェーン管理、製造、市場情報といった機能を自動化する際に、十分な分析と人工知能とともに使われるビッグデータには、大変なパワーがあることも理解しています。しかし、ビジネスリーダーは人事の自動化に対し、懐疑的かつ注意深い姿勢で臨むべきだと考えます。

つい最近、日本公正取引委員会、IBM、グーグル、SAPからパネリストを招いての、ビッグデータに関する特別イベントに参加する機会がありました。 あるパネリストは、就職希望者の履歴書の選別を自動化するやり方について語っていました。この方法では、人事部長の人選のやり方を機械が学習するのだそうです。確かにこういったアプリケーションは、多くの履歴書を素早く選別するには役立つでしょうが、人選の質を上げるのに効果がでる可能性は低いと思います。

私の目から見た人事部長というのは、企業の中でも、特に単純なポジション以外の履歴書を選別することを最も効果的にできる人たちだとは思いませんが、それにしてもこの自動化については本当に良いアイディアなのか、確信が持てません。 実際、私のクライアントである某社では、あるポジションに大変理想的ななかなかいないような候補者が人事部によって不採用となり、その後ライバル社に就職を決めたという事態が起こり、その後、CEOは人事部に採用の選別をやらせる制度を廃止しました。この候補者というのは優秀な人材で、一般の型にはまらないタイプだったのです。人事部長も、機械学習も、こういった例外ケースを扱うことはできません。そしてそのせいで、ビジネスに大きな打撃が与えられることもあり得るのです。

また他のあるスピーカーは、社員が将来昇進するかどうかという傾向を90パーセントの確率で予想できるという、実験的なアプリケーションを紹介しました。しかしそもそも、マネージャーたちが昇進すべき人をちゃんと昇進させているかどうか、誰にわかるでしょうか。このようなアプリケーションが実際にどのように使われるのだろう、と考えると、ぞっとしてしまいます。スピード昇進を遂げたり、様々な訓練の機会を与えられるのはどのような人でしょう。第一線を退かされるのは誰でしょう。有能な社員を脇に追いやったりしたら、その人はライバル会社に乗り移るのは目に見えています。ダメな社員を昇進させたら何が起こるでしょうか。部下となった社員の中でもできる人達は、もっと良い仕事環境を求めて会社を去ってしまうかもしれません。

映画「マイノリティ・リポート」では、ビッグデータのアルゴリズムが犯罪を犯す可能性が高いと示した人々が、犯罪が起こる以前に逮捕される様子が描かれていましたが、 そのようなSFの世界が実現する日も近いのでしょうか。映画では、テクノロジーは完璧なものであり、間違いは起こさないものと考えられていました。しかし実際の世界では、テクノロジーは完璧だとは言えません。未だに関連性のないグーグルの広告や、 アマゾンからの不可解なおすすめ商品が画面に出てくることがありますが、それは明らかにこれらのサービスのアルゴリズムが、私のインターネットの使い方から間違った仮定を立てているからです。これは特に大した問題だとは思っていませんが、人事にこのようなテクノロジーを当てはまるとなると話は別です。完璧とは言えないテクノロジーに頼ってビジネスを行うことの怖さ、またその結果人の人生を弄んでしまうかもしれない可能性を考えてみてください。

リーダーシップや人間による優れた判断力に代われる人工知能など存在しません。 Share on X

あなたにも自分の能力を十分発揮していただければと願います。

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