Business people in a meeting discussing development

ビジネス開発担当者は顧客にどのように接しているか

営業やビジネス開発の担当者が顧客や見込み顧客に対してどのような対応をしているか、それを実際に目の前で見てみるまで、CEOにも理解できていなかった、というのはよくあることです。最近聞いた話ですが、あるCEOもそういった体験をし、驚いたのだそうです。

日本のアパレル会社のCEOは、友人であるこの米国化学品会社のCEOと会っている時に、彼の会社が製造しているハイテク素材を自社の製品のひとつに採用してみることに興味がある、と話しました。

そこでこの化学品会社のCEOはビジネス開発の担当者二人と共に、後日、アパレル会社CEOのオフィスを訪ねることとなりました。

「では、お話を聞かせていただきましょう。」とアパレル会社のCEOは促しました。

それを聞いたビジネス開発担当者の二人は、スライドを映し、準備万全のプレゼンテーションを始めました。

しかしプレゼンが始まって1分も経たないうちに、このCEOはそれを止めさせ、こう言いました。「パソコンはしまってください。あなたの製品について聞きたいだけなのですから。」

ビジネス開発担当者はそう言われて黙り込んでしまいました。二人のどちらとも、マーケティング用の資料や営業用の小道具なしで、単に自分の言葉でざっくばらんとしたビジネスの会話を行うことができなかったからです。化学品会社のCEOは唖然とし、そして恥ずかしく感じました。彼は製品の説明を自分で行い、ミーティングを終えました。自分が同席している時にビジネス開発担当者が顧客にこのように対応しているということは、自分がいない時はどうしているのか、CEOには想像もつきません。これまでも彼は、自分の会社は利益を出してはいるけれども、十分な業績を出してはいないと感じてはいたのですが、この件により、その理由が垣間見えてきました。彼が自社の社員が実際の見込み客と対応している姿を実際に見ることができたからこそわかったことです。

またこれは日本の別の会社のCEOから聞いた話ですが、彼は自分が率いる社員達が十分な業績を出していないと考えています。そしてそれは特に営業チームのやり方に起因している可能性が高いようです。しかし彼はそうは思いながらも、実際に営業チームの現場での様子を観察しようとしたことはないそうです。

あなたも自分の会社の営業やビジネス開発担当者たちがやり方を変えれば、業績が上がるかもしれない、と考えているのであれば、実際にご自分で彼らを観察してみるべきです。では業績の上がらない社員と素晴らしい業績を出す社員との違いはどのようなものでしょうか。以下、私の経験、観察から感じたものをリストアップします。

業績の出せない人  素晴らしい業績が出せる人
セールストークを丸覚えし、それを繰り返す。 会話をする。相手のビジネスについて質問する。自分の考えを提供する。
スライドやカタログ、プリント、スペック、データ、料金表、プレゼン用ビデオといった道具に頼る。  道具を必要としない。少なくとも相手のビジネス目標が理解できるまでは、会話に重きを置く。
質問事項をまるで口頭テストのように扱う。正しい答えで対応しようとする。もし答えがわからなければ、答えを調べて折り返し電話するように言う。 質問事項を会話を深めるきっかけとする。何故そのような質問をしようと思ったのか尋ねる。相手が信じるもの、モチベーション、懸念などを理解する努力をする。
技術上の必要事項、スペック、納入期限、予算について尋ねる。 相手がビジネスの結果として何を達成したいかを尋ねる。
ミーティングの最後には、契約を取り付ける。もしくは、もっとよくあるケースでは、また連絡をしてもらえることを何となく期待しながらミーティングを終わらせる。  ミーティングの最後には必ず、誰がいつまでに何をするか、といった具体的な次のステップを明確にする。
よく話す。 相手の言うことをしっかり聞く。
自分より高い地位の人と話すことを恐れる。CEOとどのようにして直接話せば良いのかわからない。 CEOと話すべきであるような場合には、それを躊躇なく行う。価値について話す時には、地位など関係ないことを理解している。
ミーティング前にリサーチを行い顧客について学び、しっかり準備をすることにこだわる。 準備をするという理由だけでミーティングを延期することは決してしない。その場で質問をすることで相手のビジネスや目標について理解する能力を大事にする。
相手のご機嫌取りをする。顧客を神のように扱う。簡単な質問を答える時でも、相手をちょっと持ち上げる時でも、とにかく「ありがとうございます」を繰り返す。 相手と対等に会話をする。もし自社の製品やサービスを褒められた時にはこのように答える。「今おっしゃって下さったようなことは、本当に多くの顧客の方々からも言って頂けるんです。」
相手の会社で具体的にどのように購買決定が行われるかを尋ねたり理解したりしていることは滅多になく、購買決定権を握るグループや人々もぼんやりとわかっている程度、もしくは勝手に想像している、というのが関の山である。  相手の購買プロセスについて尋ねる。特に誰がどういった評価基準を用いて何を決定しているか、といったことを押さえる。直接話している相手がそのプロセスの中でどういった役割を果たしているかを確認してから、次のアクションを決定する。 
仲介に入っている人に対して提案を行い、あとはそれが上手くいくことを期待するだけ。仲介人を通さないことを恐れる。典型的な提案書受理率は10パーセント程度。  自分で購買決定権を持っているバイヤーのみに提案を行う。典型的な提案書受理率は80パーセント。
「イエス」という答えを意味なく求めるばかりに「ノー」と言われるのを避けようと、「多分」という答えで終わるミーティングばかり続ける。結果、「多分」という答えをもらった見込み客のリストばかり増え、その全員が「返事待ち」状態である。 どの見込み客でも、「ノー」という答えはさっさともらう。具体的なビジネスの話し合いが続いていない場合、2回目のミーティングを行うことも殆どない。ビジネスのパイプには無駄がなく、見込み客の一人一人についての次のステップが明確である。 
契約を取るために割引を行うことがよくある。 相手のビジネスにとっての価値を理解した上で、価値を強調することでセールスを行うことが多い。
仕事のための教育、トレーニングは会社の責任だと考える。仕事が忙しいために自分で本を読んだり勉強したりする時間はない、と主張する。通勤電車ではスマホをいじったり、漫画を読んだり、居眠りしたりして過ごす。  仕事のために自分で勉強する。セールス、ビジネス開発、起業家精神、リーダーシップなどについての本を読む。会社が行ってくれるトレーニングに頼りきりになることはない。自分のメンターとなる人を探す。
ビジネス目標や購買プロセスについて聞くことは、相手のエリアの侵害にあたり、日本人らしくない振る舞いで失礼だと考えている。 何を聞きたい場合でも、何をどのように聞けば良いのかを理解している。それは日本語の場合でも同じである。 
ビジネスにおける会話を練習するためにロールプレイをすることなど殆どない。グループの設定の中でロールプレイをやるように言われれば、そのようなやり方で誰かを人前に晒すのは日本らしくないやり方だ、などと文句をいう可能性もある。 常日頃から次のミーティングのリハーサルを行い、マネージャーや同僚とロールプレイを行うことで、難しい場面にも備える。建設的なフィードバックにも耳を傾ける。必要に応じてアプローチを変える。

マネージャーが上がらない業績に慣れてしまい、それが単に「日本ではそういうものだ」などといった間違った思い込みをしてしまうのはよくあることです。しかし誤解してはいけません。業績の悪さというのは、日本であっても世界中のどこの国であっても、不健全な状態以外の何物でもないのです。
エクセレンスとは積極的に追い求めるべきものであり、リーダーであるあなたが強要すべきものである。 Share on X

ですから不意打ちを受けないためにも、自社の社員が顧客にどう対応しているかしっかりわかっていないのであれば、ご自分の目で確かめてください。 

不安になる必要はありません。もしその結果、彼らの態度が改善されるべきものとわかれば、それができない理由などないのですから。日本でも本当に優秀なリーダーの方々はそれをいつでも実行しているのです。

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