Business meeting talking about excellence and diversity.

ダイバーシティーではなく、エクセレンスを選択すること

ダイバーシティー(多様性)を目標に掲げるビジネスリーダーを目にすることがありますが、それは間違っていると思います。大切なのはダイバーシティーではなく、エクセレンス(卓越する事)です。人材の多様性は、その結果として自然についてくるものなのです。

ここで私の言う多様な人材を誇る企業とは、人材を捜す際に、ビジネス価値への貢献能力とは関係のないような採用基準を使うことで門を狭くしないような企業のことを指します。例えば性別、年齢、国籍、海外での教育の有無、身体能力、宗教、難民認定状況、出身大学、学位、子供のいる母親かどうか、既婚かどうか、性的指向など、採用の際に問題となるべきではない基準は、本当に数多く存在しているのが実情です。

多様な人々を雇っている企業はそうでない企業と比べ、イノベーションやビジネス業績において優っていることが指摘されています。確かに様々なバックグラウンドを持つ社員がいれば、ものの見方もやはり様々ですし、バラエティ豊かな見解は必ず素晴らしいアイディアやより良い決断へと繋がるものです。それでも卓越性を何よりも大切にするような環境でなければ、いくら社員に多様性があっても、それが必ず素晴らしい業績を保証してはくれません。

ダイバーシティーがあっても凡庸さから抜け出せないということもあり得ます。ある日本の企業でもダイバーシティーを一番の目標にしており、そのポリシーに沿って女性や外国国籍の人材も積極的に採用していました。社内最大の営業部門を率いるのは外国籍の社員でしたし、他社であれば男性に占められていそうなマネージメント職にも、多くの女性が就いていました。しかし、この会社の業績の方は、ひどいというわけではありませんでしたが、かと言って特に素晴らしいものでもありませんでした。営業の売り上げは大して伸びておらず、研究開発部が最後にヒット商品を生み出したのも、もう10年以上前という有様でした。マネージャーの多くはビジネスに対して消極的で、適度と思われるビジネスリスクさえ極端に恐れていました。

この会社は積極的にダイバーシティーを推進する一方で、エクセレンスの方はおざなりにしていたのです。終身雇用制や年功序列制と言った古い決まりは排除したはずだったのに、実際には存在しており、トップは仕事のできる若いマネージャーがいても、シニアのマネージャーを差し置いてその上に昇級させることができずにいました。業績の上がらない社員も、「一所懸命頑張っているんだから」と甘い目で見られていました。また横領といった深刻な罪を犯さない限り、社員が解雇されるといったこともまずありませんでした。

ダイバーシティーとはそれ自体が目標となるものではなく、エクセレンスを達成するための方法といった方が正しいと思います。ダイバーシティーを実行することで人材の選択肢が広がり、最高の社員を迎え入れる事に役立ちます。 Share on X

ではダイバーシティーなしでは、ビジネスにおいて素晴らしい結果を出すことは不可能だということでしょうか。そのようなことはありません。ダイバーシティーを実行せずとも成功を収めている企業は数多くあります。ただそのような企業でも、ダイバーシティーを取り入れれば、さらに成長できると思われます。

あなたの会社でもダイバーシティーを上手に取り入れたいと考えていらっしゃいますか。本当に成功している企業を見ていると、このような共通点が見られます。

  1. どんな場合でもエクセレンスを最優先させている。
  2. 新入社員の条件の幅を広げ、多くの人材の中から素晴らしい社員を捜している。
  3. ダイバーシティーを優先させているが、決してそのためにエクセレンスを犠牲にすることはない。
  4. 年功序列制や終身雇用制は、規律としても、実際にも廃止している。
  5. 残業を廃止し、雇用時間ではなく、会社への価値の貢献内容に基づいて報酬を与えている。
  6. 業績のあがらない社員は、容赦無く解雇する。

ビジネスのリーダーにとっては、上記事項は全て自分の権限で実行、コントロールが可能なものです。しかし特に大切なのは、エクセレンスやダイバーシティーを推進できるのは、リーダーであるあなただけ、ということです。この部分だけは、単に人事部に頼めば結果を出してもらえる、というものではありません。

エクセレンスとはトップダウンで実行されるものです。ダイバーシティー実行の恩恵を預かりたいと考えているのであれば、リーダーであるあなたが、まず上層経営陣のトップにエクセレンスとダイバーシティーを実行させ、そこから会社の下層へと浸透させていく必要があります。つまり、エクセレンスもダイバーシティーもとにかくリーダーシップ・チームから始めなければならないということです。会社の下層レベルからダイバーシティーを取り入れても、もし上級レベルにダイバーシティーの考えが行き渡っていない状態では、継続的な結果は望めません。

ダイバーシティーとは妥協を許さないエクセレンスのためのものです。エクセレンスの選択はどのような場合でもあなたにかかっており、必須のものである、というケースは殆どありません。あなたはどのような選択をなさいますか。

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