会社は自分のスタイルに合わせること

私が知っている日本に駐在している外国人CEOの中でも特に成功している方々は、自分のリーダーシップスタイルを会社の文化に合わせるなどということは、決してやりません。彼らは逆に企業文化の方を自分のスタイルに合わせます。これはあなたにもできることです。

以前、フランスの会社から日本に駐在のCEOとして来られたばかりの方のオフィスにお邪魔したときのことです。彼女はコーチが必要であると感じていました。その理由を聞いたところ、彼女がそれまで世界中で成功を収めることができたのは、その独特なリーダーシップスタイルのおかげであるということを説明してくれました。しかし彼女の周りからは、そのリーダーシップスタイルは日本では上手く行く筈がないと言われているというのです。彼女がそういった人々からアドバイスされたのは、自分のリーダーシップスタイルを「日本の」企業文化に合わせる、というものでした。そこで彼女は私にアドバイスを求めてきたわけですが、私が彼女に言ったのは、彼女が企業文化に合わせるというやり方は本末転倒である、ということでした。

また、ヨーロッパの本社から新たに日本に駐在を命じられたCEOの話ですが、彼の場合、それまで様々な国々で率いてきた組織はフラットな作りになっており、階級にとらわれることなく、社員とのオープンなコミュニケーションを保ってきました。ところが日本では、こちらから話しかけない限り部下が自分と話すことを避けており、話しかけられても消極的に返事してくる、という状況を目の当たりにし、その状況を変えようと決めました。彼の周りの人々は、「日本は階級社会だから」という理由で、それが無理である、とアドバイスしたにも関わらずです。

彼はこういったアドバイスを全て無視し、これまで社長を務めたどの国の会社でも行ったように、部下とのランチをオープンにスケジュールし始めました。このおかげで、コミュニケーションに存在していた階級制度は、数ヶ月のうちに崩壊しました。中間管理職に就く人々も、これに気づきました。

このCEOはまた、日本での役職に就いた後、多くの上級社員が、その役割をしっかり果たしていないということ、そして例えサポートを与えても、彼らの業績が上昇する可能性が殆どない、ということに気付きました。ところが彼が人事部長に彼らの解雇のやり方について訊ねて言われたのは、解雇を行うのは日本の文化に反しているだけではなく、日本では違法である、ということでした。

このすぐ後に知り合いの日本駐在のCEOから聞いたのは、人事部長が言ったことは間違っている、ということでした。そこで彼はまずこの人事部長を解雇し、その後問題のある上級社員たちの解雇も行いました。結果、勤務年数だけではなく、個人個人の行為や業績によってもプラス、或いはマイナスの影響がある、ということが社員に明確になり、社内にやる気が見られるようになってきました。そしてこの会社はそれまでの最高の業績を出すこととなりました。

こう言ったいわゆる日本の企業文化について色々忠告を受けているのは、日本駐在のCEOの方々だけではありません。私のクライアントである日本企業の日本人社長が、素晴らしい業績を上げている営業マネージャーを、営業部長に昇格させようとした時のことです。彼のすぐ下の役員はそれに反対しました。理由は、その営業マネージャーより長い期間会社に勤めているだけでなく、彼より年上の社員がいるから、というもので、「営業マネージャーを彼らより先に昇進させてしまったら、彼らはきっと辞めてしまいますよ!」と忠告してきたのです。この会社ではとうの昔に終身雇用制や年功序列制をやめたことにはなっていたのですが、役員たちは実際にはそういった制度を続けていたわけです。

この社長はそのような忠告は無視し、営業マネージャーを営業部長に昇格させました。古い社員たちにとってこの昇格はショックではありましたが、それでも誰も会社を辞める人はでませんでした。彼らは新しい現実を受け入れ、当初は囁かれていた嫌味のようなことも、いつか聞かれなくなっていきました。そして彼ら自身も、年功序列制のようなものに縛られることはなく、業績を上げれば成功を達成する道があるのだ、と理解するようになったのです。結果を出す自信のある下級のマネージャー達は、昇進の可能性が見えてきたことで張り切るようになりました。以前はより良い機会を得るにはよその会社での仕事を探すしかないと思っていたのに、今ではこの会社で良い仕事をすれば認められ、報いてもらえることがわかったからです。

自社のマネージャーや社員がある行動様式を示しているからといって、それが日本人全部に共通のものだとか、変えられないものだと信じるべきではない。 Share on X

あたかもエキスパートであるかのように振る舞う日本の人から、日本ではこういうものである、とか、いわゆる日本的なやり方を受け容れてそれに適応しなければならない、といったアドバイスを受けることがあっても、それを鵜呑みにしてはいけません。そのようなアドバイスは大抵、アドバイスを与える人にとって都合の良いものであり、それを受ける側にメリットがあることはありません。 彼らはあなたのせいで自分にとって都合の良いやり方をかき乱して欲しくないのです。日本では絶対こうである、といったアドバイスを与える人たちは、大抵は無知なだけです。私の経験から言うと、そのようなことを確信を持って言う人たちは、他社で働いた経験がなく、どこの会社であっても自分の会社と同じような状況であると思い込んでいるだけなのです。

ですから、もしまた「ここは日本なのだから、あなたもリーダーとしてそのようなことはするべきではない」などといったアドバイスをする人がいれば、丁重に聞き、頷いてから、ご自分が正しいと思われることを実行してください。素晴らしいリーダーシップとはどこに行っても通用するものですから、あなたのリーダーシップも同様な筈です。

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