改革における改宗者の熱意の力

改革を行う際、周りからの賛同は得られればそれに越したことはないが、プロフェッショナリズムさえ得られれば大丈夫である。

以前、ある会社のCEOに、社内の部署の改善プロジェクトを依頼されたことがある。100人以上の営業スタッフとマネージャーを擁する部署だったが、責任者である副社長からまず聞かされたのは、改善プロジェクトなど時間の無駄だ、という言葉だった。欧州本社から求められている目標数値は非現実的で、現在の業績レベル以上を実現するのは不可能だと。彼女のスタッフの多くも同様の意見だった。

その上彼女は、私に、日本市場を理解していないCEOと本社の幹部を説得し、営業目標を下げてもらうのを手伝って欲しいとまで言ってきた。

私は視点を変えて、尋ねてみた。

「いくつか聞かせてください。

あなたは自分の営業スタッフがパーフェクトだと思いますか。彼らが新しいことを学んだり、改善することで、業績を上げることは不可能でしょうか。」

「いいえ、改善の余地はかなりあると思いますよ。」というのが彼女の答え。

「営業マネージャーの方々はどうですか。彼らには、業績を上げるための改善の余地はあると思われますか。」と私は続けた。

「ええ、もちろんです」と彼女は認めた。

「では、あなたのチームに改善の余地があるのに、業績を改善するすることなど不可能だと上司や本社にわかってもらうことなど、難しいことだとは思いませんか。」

「確かに。でも、チームに変革を取り入れても結局何の改善も見られなければどうするんですか。」

「そうしたら、更なる改善は不可能であると主張する良い理由ともなり得るかもしれません。」と私は認めた。「しかし、改善を試みもしないでそのような主張をすれば、誰もあなたの言うことに耳を貸しませんよ。」

「でも私には何をどう変え、どこから始めれば良いのかもわかりません。」と、彼女は率直に打ち明けてくれた。

「私にお手伝いさせてください。」私は力強く答えた。

その後彼女は、私のアドバイスを実行に移し、売上結果は改善、そしてチーム内にあった抵抗や懐疑心といったものは熱意へと変わり、多くのメンバーが賛同してくれるようになっていった。まず最も業績の低いチームが私のアドバイスを全面的に受け容れ、瞬く間に、彼らは部門内で最高の成績を収めるようになった。他の営業チームもそれに続き、以前批判ばかりしていた社員は、気がつけば私を熱心に支持してくれるようにもなっていた。

あれだけ懐疑的だった副社長はというと、週に一度は私と進捗状況を話し合い、問題を解決し、私のアドバイスを求めるようになった。その年末までには、彼女は目標を達成できただけでなく、どの前任者よりも最高の売上結果を達成した。その後、自分のビジネスコーチを雇うチャンスが与えられた時、彼女は私を指名してくれた。

CEOの方々はよく、改革を実施する際、事前にスタッフの賛同を得ようとするが、多くの人々は、いろいろ考慮の上賛同するかどうかを決めるので、結局改革には時間が掛かってしまう。しかしプロフェッショナルな人達が、自分が賛同するかどうかに関わらず、自分のやるべきこと常にに専念することには変わりはない。

賛同とはプロフェッショナリズムの結果として生まれるもので、その逆ではない。また、実際の成功を経験することほど、迅速に賛同を得るきっかけとなるものはないのである。

賛同はありがたく受け取り、賛同に時間が必要な人には、時間をとってもらえば良い。そして代わりに、プロフェッショナリズムに訴えかけ、賛同するしないに関わらず、すぐにアクションを取ってもらうのだ。そして、懐疑的だけれども耳を傾けてくれる人々を大切にすることも忘れてはいけない。改宗者の熱意には驚くほどのパワーがあるのだから。

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