現在、多くの企業は必要とする優れた人材を見つけるのに苦労しており、それ故に有能であろうがなかろうが、現社員をキープしなければならない、という状況に陥っています。つまり社員が減るような状況を避けたり、少なくともその数を最低に抑えようと努力しているわけですが、本当に企業のために最良と言えるのは、人員を削減することなのです。大切なのは、能力のある社員を維持することだけです。
先日、日本にある有名なグローバル企業内の大規模なビジネスユニットの責任者である方から聞いたのですが、彼は自社の人員の減り方が業界平均より高いにも関わらず、特にそのことを気にしてないとおっしゃっていました。
「私は会社全体の社員数が減っていることは全然心配していません。私が心配すべきことは優れた社員が減る、ということだけで、うちの場合、そのような事態にはなっていません。」
彼に言わせると、ビジネスにおいて社員離れの率が高いというのは良いことなのだそうです。その分外部から優秀な人員を雇うことができるようになりますし、また、内部からできる社員を昇格させることも可能になります。
スポーツにおいて守りばかりに回っていると、勝つことはできないということは、誰もが知っていることですね。ところが社員の確保となると、多くの企業は社員の満足度や積極さをあげようとして、守りの姿勢をとってしまっています。いくら給与が上がってもやる気のないような社員のためにボーナス制度を取り入れたり、社員とマネージャーの間でのカジュアルな情報交換の場を形だけ設けたり、すでに会社への興味を失い不満しか持っていないような社員にトレーニングプログラムを後から後から受けさせたりしているのです。ある企業では、休憩室に超高級なコーヒーメーカーを設置した、などという話も聞きました。
私の知っているある企業では、離職を減らす為の大変な努力が行われたにも関わらず、最近になって専門技術を持ったかなりできる社員が何人か社を去ったそうです。そういう努力はどんな時でも才能のある社員のやる気を落としてしまいます。
有能な社員の心を動かすのはチャンスだけです。ここでいうチャンスとは、彼らの才能を最高に活かしてビジネスの結果に影響を与えられるような機会であり、それはまた自分の才能を早いスピードで伸ばし、キャリアのステップアップへの道を切り開いてくれるような機会のことです。
役割や階級、業界に関わらず、大変優秀な人材に共通しているのは、学ぶことに対しての欲求と才能です。年齢も経験も関係ありません。学習する意欲と才能なしには、企業の才能ある社員の星になるのは無理なことです。企業の中で優秀な社員、あるいは無能な社員を見分けるのは難しいことではありません。
社員を保持するためにトレーニングをどんどん受けさせたりするのは絶対止めましょう。それはまるっきり無駄なことなのですから。社員が会社からのトレーニングが少ない、と嘆いているなどという話を聞くことはよくあります。確かにその通りであることがないわけではありません。しかし、そういう文句を言う人達に、自分の専門分野の本を何冊ほど読みましたか、と聞くと、殆んどの場合、「ゼロ」という答えが返ってくるのはどういうわけでしょうか。
Why invest in developing and retaining someone who does not have the wherewithal to invest in himself or herself? Share on X私の知っている人の中でも本当に才能のある人というのは、決して会社からのトレーニングが少ない、などという文句は絶対言いません。彼らはまず自分で勉強し、それから会社にサポートを願い出るのです。もし特に才能のある人材を早めに特定したいと考えているのであれば、自分の成長に自分から取り組んでいる人を探しましょう。或いは社員全員に読書リストを配り、自主的に読むように言ってみて下さい。そしてそれらの本についてディスカッショングループを作り、マネージャーに社員をリードさせる形で話し合わせ、実際に誰が本を読み、ディスカッションに参加するか観察してみて下さい。それが学ぶ気のある社員であり、企業が投資し、保持するべき人材なのです。
では他の社員はどうすれば良いのでしょうか。彼らが会社を去っても気にすることはありません。どんなに労働市場の状態が悪くても学ぶことに全然興味のない人というのはあり溢れています。そう言った社員にはどんどん辞めてもらって、本当に必要な人材のためのスペースを作りましょう。
最高の人材に焦点を当てて、それ以外は気にしなくて良いのです。