truth

聞きたくない真実

私の知り合いである日本人CEOの話です。彼は大変成功している人で、つい最近、かなりの問題を抱えている日本企業のリーダーとなったばかりなのですが、私にこのような質問をしてきました。「この企業を立て直す為にやるべきことのトップ3を挙げるとしたら、何だと思いますか。」

「一番やらなければならないことはただ一つですよ。」と私は答えました。「とにかく徹底して正直であることです。」

会社再生のエキスパートと呼べる代表取締役を私も数人存じ上げています。彼らは破綻したビジネスを再生させることで名を成しました。こういった方々に対しては融通が効かない、冷酷な目つきをしている、感情が平坦、独裁的、などといったイメージを持つ方が多いかと思いますが、これらのCEOの皆さんは、落ち着いており、時にはスピリチュアルな雰囲気を感じることもありますし、共感能力もあり、良く話し、思いやりもある愛想の良い人ばかりです。

しかし彼らの中には予言者は一人もいません。皆さん言いづらいような真実であっても躊躇することなく告げますし、そのようなことを耳にしたがらないような人々に警告することも厭いません。相手が自分より上の立場の人であっても、ビジネスを回すために必要な社員であっても、自分の雇用を簡単に左右できる会社のオーナーであっても、関係ありません。つまるところ、成功するために何が必要か、ということに耳を傾けることができないような人達は、成功のために必要なことを実行するに当たって役に立ってくれることなどまずないのです。

ありのままの真実をそれを聞きたがらない人に告げる、というのは、単に単発プロジェクトの領域でのみ起こることではなく、リーダーシップにはついて回るものです。これは日本で繁盛していた企業の比較的若い代表取締役オーナーの例ですが、彼は何十年もの間会社が採用していたビジネスモデルが、この先の見据えた際、会社を成功させるには役立たないということに他の誰よりもずっと早く気づいていました。しかし、役員や社員からの反応、そして言うまでもなく顧客にどう捉えられるかということに不安を感じていたために、このことを周りに伝えることに躊躇していたのです。

もし残酷な現実を知らせることで、困ったこととなる可能性はあるでしょうか。それはあります。実際、彼が正直にこのことを伝えると、好ましいとは言えないことも起こりましたが、致命的と言えるようなことは結局のところ、起こりませんでした。もし代わりに現実から目を背け続けたり、真実を誤魔化して伝えていたりすれば、それは致命傷となったことでしょう。

この代表取締役は会社がゆっくりと苦しみながら傾き、いずれ滅亡に至ってしまうことを防いだ、ということは、私には断言できます。もちろんその過程で抵抗や痛み、失敗や停滞、予想だにしていなかった問題点もあった筈です。それでもこの会社はそれを乗り越えてこの先成長し、繁栄することができるのです。

私はクライアントへのアドバイスをすることでお金を頂いていますが、時には私の言ったことを良く受け取ってくださらない方もいます。時には私の助言を聞いて顔をしかめる代表取締役もいますが、大体の場合、バンドエイドを剥がすかのように受け止めてもらえます。一方で私のアドバイスを無視する方もいらっしゃいます。もちろん決定を下すのは彼らの権利ですが、そうすることで自分自身を危険に晒しているということは、はっきり伝えさせて頂いています。もちろんそのようなことを聞きたい人などいないでしょうが。

私からのアドバイスに激昂した代表取締役の方もいらっしゃいました。人間というのは感情的になりやすいものですから、仕方ないと思っています。私がやり方を変える気もありません。

私に賛成してくれないクライアントも、私の言うことを聞いてはくれます。そしてその後も私にプロジェクトを何度も任せてくれるのです。彼らはたとえ彼らが聞きたくないと思うようなことでも、私がありのまま伝えることを知っているからです。あなたの周りにはそのような勇気を持った人々はいますか。またあなた自身はどうでしょう。聞きたくないような事実でも、それを伝えるべき相手はいないでしょうか。

真実はどんな場合でもいずれ表面化します。ダメージがなされてしまったことが誰の目にもわかるようになってしまってからではなく、あなたの口からできるだけ早い時点で知らされる方がずっと良いのです。それがリーダーのやるべきことなのです。

真実はどんな場合でもいずれ表面化する。ダメージがなされてしまったことが誰の目にもわかるようになってしまってからではなく、あなたの口からできるだけ早い時点で知らされる方がずっと良い。 Click To Tweet

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