ペインポイントや問題点などを追求すべきではない

フィットネスジム会員になる申込みの際に、スタッフから「肥満など、健康上のどのような問題を抱えてらっしゃるんですか。」と尋ねられたとしましょう。

健康ではあるけれども少し体重を落としたいとか筋肉をつけたいとか思っている人が殆どだと思いますが、もしあなたもその一人だった場合、このような質問をされたらそのジムに対する印象はどう変わるでしょうか。

潜在的な顧客との関係を始めるにあたって、相手には何か問題があるということを前提にするというのは、最悪なやり方です。これはフィットネス、金融サービス、食品加工など、どの業界においても言えることです。しかしながら私は、問題点やペインポイントを探し出すように教育された営業担当者をよく見かけます。その多くは、営業で成功したわけでもなく、また低賃金で満足しているような営業「教育係」からトレーニングを受けていました。

「問題」を抱えた顧客というのは実際には殆どいません。問題のある会社というものは、倒産する傾向にあるからです。それよりずっと数多く見られる顧客は、非常に知的で成功しており、またビジネスにも精通している一方で、自社の何らかの側面を改善したいと思っている人々です。早急な改善を望んでいるケースも多々あります。

改善したいと思う気持ちは、問題点やペインポイントとは関係ありません。健全なビジネスや優秀なマネージャーなら、当たり前に感じるものです。改善すべき点がないと言うマネージャーばかりの会社は、危機に向かっている停滞したビジネスである、と断言しても良いでしょう。

営業担当者とのロールプレイで、私が潜在的な顧客を演じたことがあります。営業担当者は自分自身、つまりセールスマンを演じました。彼は傲慢な言い方で、私にこう言いました。「最近物流コストが高くなって、貨物スペースも足りないという問題が増えています。弊社なら、コストの節約もスペースの調達もお手伝いできますよ。」

私は一瞬沈黙してから、次のように答えました。「ご存知の通り、弊社は業界では世界最大手のメーカーです。物流コストや貨物スペースといったことが重要な問題になることは殆どないんですよ。」

そう言われた営業担当者は驚き、私にどう返事するば良いのか、わからなくなってしまいました。顧客役の私は、そこでミーティングを終了させ、訪問してくれてありがとうと彼に告げました。

この営業担当者の実際の契約成立率は5%以下であり、多くの同僚も似たような結果しか出せていませんでした。契約を成立させた場合でも、その殆どは大した利益にもならないようなものでした。中には赤字になる場合さえ出ていました。

そんな中私は、営業担当者を担当する営業ディレクターから、好業績を出している日本のグローバル製造会社の見込み客とのミーティングがあるのだが、その準備を手伝って欲しい、と頼まれました。そしてそのミーティングで、営業ディレクターは、前もって練習した通りに会話を進めました。

「まず教えて頂きたいのですが、私とのミーティングをご了承頂けた理由をお聞かせ頂けますか。」

この見込み客は最優先事項は積送品を減らすことであると説明してくれました。積送品は貴重な現金を消費しており、成長のために他に投資する方に現金を回すことの妨げとなっているばかりではなく、サプライチェーンの非効率化の原因ともなっていたからです。営業チームが顧客の厳しいサービス条件をクリアしマーケットシェアを広げるためにも、迅速に効率化を図ることを彼は望んでいました。

この営業ディレクターは契約を取り付けることに成功しました。彼の下で働く営業担当者も同じような営業方法を身につける必要があるのは明らかで、彼もそれを責任を持って実行させることでしょう。 accountable for doing so.

結局、問題点やペインポイントにフォーカスすることには何の利点もないのです。どのような時でも、改善という面にこそ、最大のビジネスチャンスがあるのです。

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